その後、人々の食の嗜好が変化していく中で、伊勢屋は時代に合った漬物を追い求め、試行錯誤しながら品目を増やしてきました。今なおロングセラーとして愛される「水なすのぬか漬」や「大根の割漬」といった商品も、そうやって開発されたもの。「大根の割漬」は、丸ごと1本の大根に薄いスライス状の切込みを入れる職人の技。その繊細な包丁さばきでつくるため、大変手間ひまがかかる逸品です。けれどこの作業を機械化してしまうと、大切な大根のみずみずしさが奪われ、仕上がりに影響するため、今も頑固に手仕事を守り抜いているのです。
漬物が「伝統的保存食」から「旬を活かした生鮮食品」へと進化しつつある昨今。伊勢屋でも、北海道産昆布やリンゴ酢などを使ったフレッシュ感豊かな「手前漬」に力を入れています。「手前漬」という名前は、「自分たちの信じる手づくりのおいしさを届けたい」という伊勢屋の思いのあらわれ。今では、一流ホテルや三つ星レストランなどにも 評価をいただいている逸品の漬物です。